すっかり秋も深まってきて、冬到来まであと少しという所ですが、皆さんお元気ですか?イタリアでは秋を感じることとして、栗やカボチャ、ポルチーニ、また新しいオリーブオイルなどの食の味覚が一番に上がるのは、私の仕事が食関係だからなのか、ただの食いしん坊なのか…。
そんなことはさておき、日本もイタリアと同じく四季を持つ国で、また緯度も割と近いこと、南北に細長い土地条件などから、気候も似ている部分が多いです。日本も今の季節は秋。今日は日本の秋についてお話したいと思います。
お花見: 世界が桜色に染まる時
日本を好きな方ならすでにご存知であろう「お花見」。これは春に桜の花を愛でる日本人にとって欠かせない行事の一つですが、秋にも似たような自然の変わりゆく美しさを愛でる行事があります。
紅葉を狩るってどういう事 ?
それが「紅葉狩り」。「紅葉」を「狩る」なんで不思議な言い方だなぁ、と私も不思議に思っていたのですが、何をするのかというと、紅葉をしている木々や葉を鑑賞しに山や森、渓谷や神社、寺に出向くというものです。

多くのテレビ、雑誌、インターネット上で見どころの情報や、現在どのくらい色が変わっているかなど伝えてくれる事もあって、秋が深まってくると友人や家族連れで休日には紅葉狩りスポットは賑わいを増します。
多くの人がピクニックのごとく森林や渓谷を歩くのももちろん、バーベキューができるような場所では、飲食をしたりピクニックをしたりと思い思いの過ごし方で、紅葉を楽しみます。またレストランやカフェ、紅葉の美しいもみじを中心に庭園に配置して、この時期は紅葉を楽しめるレストランとして営業したり。
とにかく紅葉は日本で秋を感じるのに欠かせない文化の一つなのです。
紅葉狩り、選ばし者だけの贅沢 ?
そもそもこの紅葉狩り、歴史はとても古く紅葉を愛でるのは約1300年前の文献にも残っているほどです。
当時はまだ貴族のみに許された文化であり、また彼らは歩く事を品のある事としなかったため、山や森の遠くに出向く事好まず、秋の風習というにはまだ遠いものでした。
紅葉狩りの風習が庶民にも広がったのは江戸時代中期(1700年ごろ)から。この時代に一般の人も芸術、文化を楽しむようになったのですね。
イタリアの歴史と比べてみると、ルネサンスから約200~300年後という事なので、数百年の違いがあるとはいえ、場所が違えど文化が花開く時は割と似ているのだなぁ、と偶然かもしれないけれどそんな事を思いました。

紅葉の葉の味
さて、この紅葉。実は見て楽しむものだけではありません。あまり一般的ではありませんが、紅葉の天ぷらなるものが存在します。
小学生の時の野外活動で作ったの事があるのですが、「紅葉の天ぷら」なるものが存在するのです。文字通り「紅葉」を「狩り」にいき、教室に戻りてんぷらの衣をまとわせて油で揚げて頂きます。紅葉の味自体はよくわからないのですが、砂糖が入ったこの衣が本当に美味しくて、30年経った今でもよく覚えています。
蓑面の紅葉狩り: 忘れられない経験を
もし大阪の箕面に行かれることがあれば、こちらの銘菓はもみじの天ぷら。天ぷらとはいうものの、ただの揚げ物ではなく甘いお菓子です。
一年間塩漬けした紅葉に、ゴマの入った甘い衣をつkて丁寧に20~30分ほどじっくり揚げて作るお菓子は、見た目のとても可愛い。
年中食べることができるので秋でなくてももちろんいいのですが、箕面は紅葉でも有名な地域です。目でも舌でも日本の秋を楽しむのもいいですね。

吉田シェフの季節感溢れる皿: トスカーナから日本へ
また私のイタリアで知り合った日本のシェフで、今現在静岡でシェフをしている友人のタカさんは、季節ごとに日本の四季を感じる食材を探して自ら仕入れに行っていらっしゃるのですが、 先日は山に立ち寄った際に、美しく色の変わった紅葉を持って帰っておられました。
浜松 で楽しむ il Marcampo の懐石料理のようなイタリアン
それをこんな風にお皿にデコレーション。和食の懐石料理ではお皿の上で季節を表現するために、花や葉をデコレーションすることがあります。
タカさんはトスカーナ、ボルテッラのレストランで修行された後、彼のレストランをオープンさせました。彼の料理はあくまでイタリア料理をベースに、日本の食材や知識を生かした彼にしかできない料理。イタリアの方にも楽しんでもらえるイタリアンなのではないかな、と思います。
吉田シェフの料理達
柿: カキそれともカコ?
さて、もう一つ。私がイタリアに来た時から日本とイタリアの秋の共通点であり、大きな相違がある果物についてお話したいと思います。それは柿。
東アジア原産の果物である柿は、日本でも発音は「カキ」。(ちなみに日本語には複数形はありませんので、一つでもカコではなく、カキです)ですが、食べ方は大きく違います。
最近イタリアでも見かけるようになった「りんご柿」、日本では「甘柿」といってこちらが主流です。スーパーや果物屋で見かける柿はほとんどこのタイプです。ですのでイタリアのようにドロドロに熟するのを待ってから食べるわけではありません。
日本に行った際、柿を買ってから熟すのを待たないようにしてくださいね。
柿のカーテン
ではイタリアと同じような渋い柿が存在しないのか、というとそういうわけではなく「渋柿」という名前で存在しています。山や家庭の庭で、まだ渋みが残る硬く若いうちに収穫します。
こちら、日本ではどのように食べるかというと、皮をむいたあと、紐にくくりつけて天日で干して「干し柿」というものにして食べます。こうすることで渋みが抜け、食感は少し独特ですが、お日様の恵を受けた柿は甘さが凝縮し、私は大好きです。保存性もぐんと高まります。
また田舎などに行くと、この干し柿がカーテンのようにぶら下がっている光景を目にすることがありますが、それもまた一見の価値ありです。
もしくはヘタの部分を焼酎つけて、ビニール袋に2~3日入れておくと渋みが抜けるそうですが、実は私食べたことはありません…。
イタリアでも35%以上のアルコールの高いお酒につけておけばできるのでもし固めの柿を見かけたら、今年試してみようと思います。
食欲の秋
日本の秋は景色ももちろんですが、収穫の秋と言われるほど食べ物も農産物だけではなく、魚介類も豊富にとれ、本当に魅力的な季節だと思います。
もしオススメの日本を旅する季節を問われたら、悩みはすれど秋をオススメします。気候もいいし、景色もいいし、食べ物は美味しいし…
書きながらもう10年帰っていない日本の秋が恋しくなってきました。イタリアの皆さんにも少しでも日本の秋の風を感じてもらえたなら、嬉しいです!ではまた!

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